都市風景(81〜100)/草野春心
 

  僕たちの独り言

  96.

  闇について言うべきことは何も無い
  沈黙について言うべきことが何も無いように
  しかし生について
  性について死について詩について
  光について
  我々の言葉は消費されるだろう
  なにしろ
  在庫だけはたっぷりある

  97.

  男は女を抱く
  おろしたてのシャツの
  なめらかさを確かめるように
  女も男を抱く
  新しい記憶を新しい身体に馴染ませるように

  98.

  空白
  虫たち
  空白
  虫たち……

  99.

  いつか
  太陽も月も
  街の灯りもない
  本当の光の下で会おう

  100.

  世界を
  喩える比喩になって死のう
  君を
  うたう詩になって
  生きよう



[グループ]
戻る   Point(1)