百年目の風船/N.K.
 
百年目の風船が飛んでゆく
百年目の風船は一つではない

それぞれには手紙と花の種が結わえられ
それからヘリウムと
教会の創立百周年なので
天への思いが詰まっている

風船は一つだけではないから
その思いは一つだけはない
風船は天へ向けてのものだから
その思いは一つである

集った子どもたちは一斉に
「神様ありがとう」と
確かに 風船を飛ばしたのだった

結わえられた種は地上において芽を出して
手紙の返事が子どもたちを
確かに 地上において繋いでいくことだろう

百年目の風船は昇っていく
空は曇っていたけれど
君たちを笑顔で輝かせて

百年目の風船は昇っていく
自分には偶然居合わせていたとしか思えなかった
この地上から
自分の地上の思いを軽々と超えて

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