虹の扉/結城 希
 
     真っ白な壁にくるまれて
     身じろぎ一つしない 彼女の
     静かな寝息が こんこんと響く

そこは いつも
扉に囲まれていた

円い扉、四角い扉、
ぶ厚い扉、簡素な扉、

いつだったか 私は
悲鳴を上げて
全ての扉の 鍵を壊した
もう
ここから出て行く必要は
ないのだと 自分に言い聞かせて

     彼女の背に亀裂が走った
     剥落した 古い角質の下から
     濡れそぼった 純白の肢体が姿を現す

扉を開くたびに
また違う あなたに出会う
知らなかった言葉や
気づかなかった足跡が
輝き放ち始める

それは、

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