逆上がり/殿岡秀秋
地面を勢いよく
蹴ればいいんだ
地面をけって
いきおいをつけると
からだが鉄棒を軸に
一回転して
鉄棒の上で
両手で自分を支えて
浮いていた
とても無理だと思っていたことが
ついにできた
不思議だ
地上を離れている
いったん逆さにみえた空が
ひっくりかえって
頭のすぐ上に雲がのる
少女も一回転して
鉄棒の上で
顔を見合わせて微笑む
いっしょにやってくれる
少女がいたから
校庭を蹴って
地上を離れることができた
少女とぼくの気持ちが
校庭の隅の風のように渦をまいて
薄いぼくのこころを
浮き上がらせてくれた
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