祖母の乳房/
小川 葉
ひとつしかない
祖母の乳房を
ぼんやりと見ていた
そういうものなのだろう
と思っていた
幼かった私
手術したのだ
その晩
どれだけの悲しみに
打ちひしがれていただろう
そして失った後
どれだけの幸せが
この世界にあることを
祖母は知ることができただろう
ぼんやりと見ていた
ひとつしかない
乳房の祖母がひとつだけ
笑っていた
私とふたつ
命が湯船に
浸かっていた
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