落鳥/水川史生
 
さの中でてのひら 鳥が落ちる風景
黙ったままでいる十字路に立ちつくした影の 家をなくす
向かい合うそこに誰もいない、
弾かれる黒白に重なっていく音階を
確かに耳にしていた最後がゆっくりと 瞼を開く

呼吸を苦しくして、
指先が掠らない そんな残照に満ちて埋もれて
ずっと方程式を解いている
お仕舞いだったと繰り返している

(誰の鼓動もとまってしまった)
(ねじと歯車が足りない)
(だから落下する、)
(黒く、点に変わる、ないた)

(ないた)

レターボックスを埋める紙飛行機 白 こぼれる、
息をとめて結末を待つ
かなしみが震えないように
盲目に標 コントラストの調和 雨音
聞こえない音を聞く 部屋の片隅
ヘッドフォンで断絶する
眼の端に映る切り取られた遠景に
落下してゆく 一点の黒い影

もうすぐ終わってしまうのだから

(それが嘘であってもいい)
(両腕で抱きしめている)
(壁が冷たい)

(あ)
(落ちる)


(ない、た)

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