無回転姑/小川 葉
 
 
 
まもなく
トンネルを通過します
と車掌が告げると
列車はわたしの耳を
通過していくのだった

長い車両は
途切れることなく
睡眠の世界を通過していく
暗闇の中
回転するものや
回転しないものたち
そして多くの姑も
そこに存在していた

朝、目覚めると
納豆汁の良い匂い
とともに
祖先を乗せて
列車は耳から去っていく
その間にも
母の耳から妻の耳へ
列車は通りすぎていき
納豆汁は
見事に伝授されたのだった
 
 
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