Magic/umineko
孤独でない人間なんていない。
その事実だけが、私を安堵させる。
職場の上司が、手品を始めた。カード手品ってやつだ。時々、その成果を披露してもらう。だいたいは金曜日の飲み会である。飲み会自体が手品研鑽の場として存在してるんじゃないかとにらんでいるのだが、それはさておき。
そういえば。他界した父もそうだった。定年後だいぶ経って、突然何冊か本を買ってきて、猛然とマジシャンめがけて邁進した。そう書くとなんだか怪盗紳士のようなおしゃれなイメージを持つかもしれないが、もう本当にシンプルに、不器用なやせ形老年男子のおたわむれっていうか、いたずらが発覚した小学生でももうちょっとマシじゃないかと思うほ
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