出張/ブライアン
声をかけた男の肌着は、破れて黒ずんでいる。
手に持ったビニール袋には、アルミ缶がぎっしりと詰まっている。
やあ、おはよう、と男が声をかけると、
湿度の少ない土地の、よく晴れた空は、
やあ、おはよう、と答える。
−年賀状ソフトって知っているか?
開発したのは僕なんだ。
出張中、航空券を落としてしまってね。
それで、鹿児島から広島まで歩いてきたってわけ。
東京までまだ遠いよね?どのくらいかかるんだろう?
もし、君に余裕があるなら、東京までの旅費を僕にくれないかな。
出張中の長い旅だ。
拒まれた提案に、彼は微笑む。
−幸運を祈る。
だって、君は出張中なんだろ?
破れた肌着から、
露出した尻が見える。
通り過ぎた彼方に、おはよう、と響く。
自転車が抜き去る。
彼の声は、橋の上を走る車に届く。
車たちは今、赤信号に立ち止まっている。
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