対峙/豊島ケイトウ
たった一本の卒塔婆のように
不健康に伸びた櫓から
私はずっと向こうの火山を見守る
今にも昂りそうで昂らない
噴き出しそうで噴き出さないそれを
ひたすら見守りつづけて幾星霜も過ぎた
(トーチカはとっくに瓦解した
灰はいがらっぽくて目にしみる
分水嶺がなつかしい……)
待つことは得意であるが
衒いはだめだ
焦らしもだめだ
そろそろ見飽きた 何もかも
しののめに立ち上る生成色の気配がいまだ鼻孔をくすぐるので南のとば口から吹き抜けるべきかどうか逡巡する生暖かな呻きが聞こえる
いっしょに火山を見守り
いっしょに火山を見届けなが
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