蚕/乱太郎
 

灰色の向こうから垂れた糸が
わたしのさらけ出した肉体をなぞってくれる
何千もの指が触れていくように
ひとつひとつわたしの感情に絡まって
蜘蛛に食べられてもいい
今はわたしなんか身動き一つ出来ないのだから
乾きかけた苛立ちを浚ってくれる
見えない向こうに囁く
糸は頷いてわたしは繭になる

戻る   Point(9)