わたくしごと(習作十句)/古月
 
きえぬ線きえよきえよと斜線ひき

ふる里の地蔵が飲んだ水を飲む

鰤炊いてシャガール展は明日まで

山茶花をのぼっていく末期の水

人間をひとりにしない基底材

家族総出でロバのパン屋を食い止める

水蜜桃夜はひとりで暮れるもの

ごはんよと呼ぶ声がして創世記

えのころやなぎ蚊帳のむこうに蚊帳がある

わたくしがわたくしごとの影になる
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