太/湾鶴
 
がある。
 でも最近じゃ太いってそんなに使わなくて、 
 太い大根も、でけぇ大根だし、
 太い声も、低い声だし、
 太鼓判を押すってのも、マジデの一言だし、
 肝が太いなんてのは、言いまわすことすらなくなってきた。
 けれども私の「太」に対するイメージは傲慢にも
 ちゃんとあって、それは、山男の頭だったりする。
 丸太のような腕ならわかるが、なぜか頭。
 山男は、日本語なんて知らないけれど、
 山をエッホ、エッホ、登ったり、
 木をエッホ、エッホ、担いだり、しているうちに
 ガンガン太くなっていく頭があるのだ。
 さぞかし、大変なことだろう。
 そんなことを考えながら
 太鼓焼き(太ってしまうが)を買いに行った私を
 知ってかしらずか、
 太一君は寝息を立てて待っている。

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