見知らぬ人へのラブレター 〜桜の手前〜/はらだよしひろ
。」と
ごめんなさい。僕は( )さんの手の温もりを知らないのです。
それさえわかれば、もう少し、もう少しだけ、僕の眼差しを( )さんの肌に 身体に 乳房に近づけることが出来るのでしょうか。
知りたいのです。( )さんの怒った顔を知れば、甦るのは何の温もりでしょう
詩になりました。書けば書くほど詩が交じっていきました。
( )さんは逞しい腕で詩を掴まえてくれるでしょうか。
やがて消えるかもしれない、その腕も手をかざせば伝わる温かみがあるのでしょう。
掴まえて下さい。
丸い温もりで絡んで下さい。
絡んで、捨てて下さい。
捨てるのであれば、掴まえて下さい。
掴まえられもせず
絡まれもせず
よって
捨てられもせず
のであれば、手紙を書くこの僕の指に入っている力は無重力を漂うようなものです。
この指に力を下さい
この手紙を染めてください
( )さん ( )さん
そのおぼろげな腕で僕を掴んで下さい。
戻る 編 削 Point(2)