はじいたような/邦秋
暑いだけの部屋を
抜け出すから
動かないで待っていて
雨は降っていない、
ここから 辿り着くまで
傘は持たないまじない
最後に受け取ったのは
声ではなく文字
表情もなく過ぎて
揺り篭の片方を
押さえ、放した
そのまま転がり始めた
せめて最期に
傍に、傍に
もう二度と会えないと
解った時
暗い空に救われた
いつまでも筆の先の
白いインクを
はじいたような模様に
包まれてたい
永久に、永久に、
脆過ぎた僕たちの
脆過ぎた約束の
代わりに僕を繋いだ
ありがとうを言うよ
はじいたような
空に、空に
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