無知のカバンに雨は降る。/ブライアン
ない。道端の草よりも体を低くして自転車を走らせるほかない。とはいえ、それが不可能であることは分かっていた。死ぬかもしれない。そう思った。
国道113号線を越えて南へ走った。その場所は韓国ではなかったけれど、北緯では十分韓国の領土を駆けていた。北朝鮮の緯度から、韓国の緯度へ。その日運んでいたカバンの中身が爆弾だったら、何人かの人は死んでいるはずだった。世界は滅亡しようと心がけているのかもしれない。誰もが戦争をしようと思っているのかもしれない。ベルリンの壁が崩壊しようが、ソ連が崩壊しようが、変わらない世界もあるのだ。
核兵器が大量の雨を降らせた時、世界は、にやりとほくそえむ。ワレワレハタダシイ、と世界が語りかける。そして、無知のカバンにこめられた爆弾は南の街へと辿りつき、多くの人間の命を奪う。ワレワレハタダシイ。
そしてまた、ワレワレハタダシイ、ので仕返しに核兵器のボタンを押すしかない。巨大な熱が地上の水分を奪い、急速に積乱雲を生む。雨が降る。その土地に。茂った緑、用水路の水の音、寂れた歩道橋の地区に、雨が降る。
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