無知のカバンに雨は降る。/ブライアン
 
 世界滅亡のカウントダウンに震える最中、地区に一つだけの信号機を無視して、交差点を自転車で横切っていった。空には飛行機もヘリコプターもミサイルも飛んでいなかった。湿度の高い空は、青空の下に、薄い水蒸気の幕を張っていた。盆地にありがちなじめっとする暑い夏だった。道路脇の用水路。緑に茂った草。揺れる歩道橋。国道113号線を横切ると、それらのものが既に過去のものとなり、既に経験した風景として通り過ぎていく。その時は何も感じることは出来なかったが、それらの、茂った草や用水路の水、寂れた歩道橋が、その土地を表すに不可欠な要素だった。

 南に広がる平野は田で埋め尽くされている。道沿いに集落が固まってあり
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