童顔/梶谷あや子
 
わたしたちの考えた春というのは
玄関すみでは
魚のかげがうごめく4時半のことだった
羽のあるもののように
わたしもそれの中に入ったり
あるいは
絵を描いている
ゼリー状の
青いこれがわたしの夜
あなたの眼に
ほころんで倒したインク瓶
のひかる環っか それからギター
鯉は祖父が飼っていたという
半身をいずれわたしにも
さらう清冽さで泥が指さきにゆきわたり
母が帰るころだろう
そろそろ餌をやらなければいけない
と思いベランダへ出ると
ざぶざぶと布団がいぶされていて
青いゼリーの散乱が
また関節の付け根に潜っていったのだ




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