平野/
光冨郁也
風の音。わたしは平野に立つ。西の空は錆びた色をしている。
離れたところ、陸橋に車が列を作って走り去る。月が風に揺れている。風の音が、遠くの車の音が、わたしの耳の中の音が、入り交じっては、かき消されていく。
わたしは立っている。ひたすら乾いている。風に吹かれて、舞う土埃を浴びて。
ゆっくりと軋みながら、傾いていく世界、わたしはひとり平野に立ち続ける。西の空が紺色に風化していく。
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