愛しのデミオ/森の猫
とりなおして
外に降り
現状を確認する
一旦 前進して
もう一度バックで注意深く
立て直した
その後
バックミラーはメチャメチャに砕け
フロントが曲がった
車体を目にして
振るえが止まらなくなった
痛みはないが
たぶん 腰と首は
やられている
事実を確認して
しばらく 気を静めるため
安らかなハンドルに
つっぷしていた
我に返り
ふと思った
デミオが最後に
身を呈して
守ってくれた
あたしのことを
ありがとう
ありがとう
ごめんね
なんども
なんども
繰り返した
自損事故だ
保健でフェンスの修理まで
カバーできた
デミオは
修復不可能なまま
悲惨な姿で
1ヵ月後
引き取られて行った
まだ エンジンは健在なのに・・
あたしの毎日の苦しみを見て
一緒に乗り越えてきたキミ
デミオ
キミ以上に愛する車に
出会うことは
あるまい
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