炭酸水と夏の気配/
小川 葉
泡がうまれ
浮かんでいって
はじけて消える
泡が泡として存在した
一瞬のいのちが
空中へ放たれてゆく
窓のそと
にゅうどうぐも
夕立がくる
ひとり
またひとりと
雨粒が窓をたたく
気が抜けた炭酸水の
コップの底に
泡がひとり
まだ死にたくないと
言うのが聞こえた
翌朝
泡はいなかったが
この夏空のどこかに
いるのはたしかだ
今日も暑い
それは夏が好きだった
あの人の気配
かもしれなくて
すこしうれしい
戻る
編
削
Point
(5)