紅茶が冷めるまで/かんな
学生のあの頃
異様な夜のさびしさに駆られて
親しい友人の家に遊びに行った
そんなことは珍しくなくて
ふたり
ベランダで煙草を吸い
きみはギターを弾いて
わたしはその歌を口ずさむ
現実を浮遊させるメロディのような
眠れないと話す
わたしの口調に少し重さを感じたのか
軽く頭を撫でるきみ
触れるのは珍しい
ガラス越しに見る月の、その欠片
ちょっと待ってな
そういってキッチンへの扉を閉めると
ガタガタと何かする音
わたしはぼーっと宙を見つめる
ふわり
飲むとよく眠れるから
出てきたのは紅茶だった
薄っすら湯
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