上滑りした会話が
水槽の中で泡を吐いた
外は
しみこむような雨
果実を一つ
大きな手が絞ったような
雨
呼吸困難で
死にそうだと
酸素が足りないのだと
嘆く声が聞こえる
君の求める
酸素
何の喩えなの?と
僕はわかりきった顔で
残酷に答えて
しみこむように
雨が降っていて
本当の敵は
そこにはいない
君の瞳が
じっと睨んでいる
見据えたその先には
何もないんだよ
「未来」も「過去」も
「あく」も「ぜん」も
目に見えないように
本当の敵は
いつだって目には見えない
小さすぎるのでも
透明なのでもなく
それは
見えないことが
それの存在の
あり方なんだ
誰かから誰かへと
そっと移動して
そして動いたり
廻ったりする
本当の敵の
あり方を
君にちゃんと知って欲しい
目に見えないそれを
見る方法は
知らないけれど