大好きな詩人を紹介してみます  「吉田一穂」/非在の虹
 
んと吉田一穂を理解するには、理屈づめな部分はどうしても必要でしょうが、ぼくたちはもっと好き勝手に読むのを許してもらおうではありませんか。
ぼくは一穂が北海道生まれであることが重要だと思います。彼の北方志向はかなり強いものだとうかがわれます。
音楽で言うとフィンランド生まれのシベリウスを聞いているような、澄んだ冷たさ、きわめて清澄な空気が感じられるのです。

たとえば、「六月」という詩はいかがでしょう。
すがすがしい北国の初夏の風が学園に吹いて来るのが、感じられないでしょうか。


六月

低い講義が続く、原書(テキスト)の明るいメランコリア。
髪かきあげて額に青く芝生の反映(てりかえ)し。

槲の葉の聡く、図書館裏の影は金色(こんじき)に深み、
 (本伏せて俯向く妹の眼鏡に海光の揺れて砕け・・・・)

教授が出て行った、口笛が鳴る。
莨に点じて哄笑が弾け、学寮からの古典的な鐘。


できれば、ここでまた、大好きな詩人や詩を紹介してみます。
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