【連詩】 指きり/古月
 
しなく遠く
浮遊し潜水を繰り返す
こころが剥がれて落ちる脱皮する魚
かな、野? 落ち込まれた水際にいたいの
利き腕が散らされ、た、の。
のみこまれて、輪郭に爪の柱が、
流れてイッタの
そして分化していく、
複眼を指で潰して
私はこぼれ落ちる魚になる

水面に揺蕩うひかり
差し出す腕を持たない私は
身をよじらせるだけで
為す術をもたない幼児のように
銀の鱗は こぼれてこぼれて
咲かなかった向日葵の種に変わっていったよ
せめて散末に生まれたら「よかった、の?」
輪郭、その他の、色彩を持たなかったらよかった
野、かな?

夜の、底にいる
私たちはとうめいな、からだ、で
屈光性を帯びた
指の芽生えを待つ
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