【連詩】 指きり/古月
幾つかと問われればただ指を折る
頃を過ぎてもただ指を折る
背伸びをし過ぎた私の深い爪から
こぼれ落ちる魚
夜の底の青
水面をすくう
静かに、丁寧に
どんなに気を配っても
波紋は広がる、響く水音
指先にちらちらと、魚の鱗が
舞う、わずかな月の
ひかりだけで照らされている
掬えない月の面影
指先から凍っていく水明り
ちらちらと、魚の鱗
にせものの月のひかりめいた
私の写絵
影をのみ込む
ねむりを支えて
波間を漂ういくつもの私が
これは夢
、それとも うつつ
どの顔もどこか歪んで
散らばっていく私たちの輪郭
雲の行方とどこか似ている
湖の奥ははてしな
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