Tonight Tonight/かいぶつ
 
が立ち入ることを拒み
耳の奥にある製氷装置が
水の融点を越えるたびに
歯を擦り合わせるいやな音を立てるのだ

僕はまた歩き出せると思う
こうしてこの捨てられた冷蔵庫の上で
中に閉じ込められたままの
吐息の白さを想像しながら
プラチナの海が良く似合う深爪の月に酔い痴れて
長く、暑い夜さえ明かしてしまえば
匂い立つほど新鮮な幸せと不幸せが
荷台に乗せられ二次配布されて行くから

不着のままの僕もまた
明朗な一葉の便りとなって
雨に濡れ泥が付こうと
どこまでも、どこまでも
懐かしい受取人の待つ
町を探して

夜行列車の灯が僕を一瞬めくらにする
僕は思い出す
幸福と空腹が寄り添っていた
あの頃の僕たち

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