バス/izumi
 
降ろしてよ。

運転手は知らんぷり。
何度ボタンを押したって、出口は開けてもらえない。

私はバスの中。
行きたいところがあったはず。
通り過ぎてから、私はどこへ行くのだったか
はっきり思い出せない。
いや、思い出さないようにしているよう。

これからどこへ行くのか。
果たして降りれるのか。

もうすっかり忘れてしまった。
降りたかった場所も。
何をしたかったのかも。

バスの中は静かだった。
怒ったって、何も変わらない。
動かしているのは運転手だから。

私はちっぽけ。ちっぽけな存在。

バスは速度を上げながら、私も年をとっていく。


10.2.16

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