水の獣/ふるる
 
雨の生糸で編んだ夜
街の灯りのビーズ揺れ
傘の上では獣の足音
軽やかに
六月の匂い 
たてがみやしっぽに乗って
運ばれる

鈴蘭を揺らす雨粒は
小粒のおいしいドロップス
だどもあの娘は青白いほっぺを濡らして
二筋の小川とめどなく
なぐさめようもなく ただ傍に
ひっそりといたんだっけ

雨で織られたタペストリイ
テエルランプの赤いリボン
縫いつけよか
若葉の匂いも染み込ませ
鈴蘭りんろん香る音
のろのろ歩きのまいまいも
あの娘に捧げてみましょうか

もういいの、いいの、いいのと
つぶやく声が聞こえます

水の獣はやがて去る
雨がようやく止みかけて
街は暁に染められて
あの娘のほっぺに薔薇つぼみ
ふんわり咲いたその頃に
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