大好きな詩人を紹介してみます  「吉岡実」/非在の虹
 
そこには夜のみだらな狼藉もなく
煌々と一個の卵が一個の月に向かっている
                             「静物」より


吉岡実(よしおか みのる)の詩集『静物』の冒頭には、四つの「静物」という同タイトルの詩が並んでいます。
四つめの「静物」。その末尾がさきに引用したことばです。
はじまりは、以下のようです。

台所の汚れた塩
犬のたれさがる陰茎
屋根のつきでた釘の頭

と、生活感はありますが、いやなきざしです。
読みすすめば、やはり事態はまがまがしく進行し、
性的というより生殖のイメージが、祝福のない生殖のイメージが濃厚に語られてい
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