誓約/寒雪
ただその時だけのために
僕は長く険しい道程を
誰に断ることもなく
誰にも称えられることもなく
ただ目的地に向かって歩いてきた
時々空を仰ぎ見ると
青いんだか白いんだか
まぜこぜになったパレットの中みたいで
僕の気持ちをかき乱す
犬にほえられたこともあった
ぬかるみに足を取られることもあった
警官に追いかけられることもあった
色々なことが
歩いている自分の脳裏を
メリーゴーランドのように通り過ぎていく
いずれ
この長旅も終わる時が来るに違いない
その時僕は
石になったお前に向かって
なんて言葉をかけようか
はにかんで笑うだけにしようか
変わることのない
変えることの出来ない
お前との約束を
時間と忘却とを引き換えに
果たしにやってきた
その瞬間
お前の声の代わりに
切り裂くようなつむじ風を吹かせてくれ
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