接吻/三田九郎
 
つの日か奈緒と交わることが

当然の権利や処理すべき義務となり

あるいは過去の女との情事の一回として

追憶の彼方に消えても

今日

ミキサーの眼光でキャラ化した

あの瞬間の戦慄は

ぼくの核心のどこかに

拭えない傷跡を残したはずだ

身体を彼女に委ね

砕かれ、刻まれ、

液体になったぼくの身体は

どんな色彩を帯び

異臭を放つのだろう

いつの日か

身体を重ね合うことに

愛以外の成分が混じった時

あの瞬間の戦慄が

またぼくを捕らえるに違いない

ミキサーが立つキッチンで

ぼくらは接吻した

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