接吻/三田九郎
 
奈緒の部屋のキッチンに

小窓から差し込む西日を受けて

ぼくに向かって微笑みかける

小型の洒落たミキサーが直立していて

到頭奈緒を奪いに来たのね。とつぶやいた

彼女の眼光にぼくは

身体の自由を奪われて

一瞬、感電して

黒地に骨だけになった

アニメのキャラみたいになった

キッチン覗かないで。

掃除してないし、恥ずかしいから。

鼓膜を揺らして侵入する奈緒の声に

縄を解かれて自由になる

ごめん。でもキレイじゃん。

西日がビル群の奥に消え

地上から消えようとしている

いつの
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