書物の家/クローバー
 

小鬼、閉じこめた春雷
ささやきはインクに紛れて
その扉を通り抜けて、火の粉が散る
誘い込まれた、お菓子の家
小鬼をめくる
13ページ目、はじめまして。


小鬼、紙を食む梅雨
重なるように二つ並んだ靴跡
小さい靴と大きな靴
小鬼をめくる
124ページ目、こんにちは
扉に、尻尾の切れた蜥蜴が這う。


小鬼、殴り書く秋雨
解れていく木々の葉
アスファルト膨らみ摩擦は光る
小鬼をめくる
239ページ目、こんばんは
雲の上は平和。


インクに紛れた、紙は白く
小鬼、隠れ消える降雪
指をかけるページも、その扉も
瞬くように、また白くなる
雨音を吸う降雪
聞き取れるささやき、さようなら。
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