悲しみの輪郭/九重ゆすら
悲しみの輪郭を、そっとなぞり
この雨の行方を探してみる
黒々と光る夜空の奥深くから、
ざあざあと雨は降っていた
冷たい三月の匂いをたたえながら
指先が閉じ込めているのは
言葉を紡ぐことの罪です
蕾がほころぶように、溢れ出てしまうのを
私の中に閉じ込めて
子宮の真ん中で飼いつづけている
熱はとても寡黙で
鼓動に合わせて、その命を宿した
薄紅色の瞬きをひるがえして
とても無垢に笑う
幼さが遺したのは、痛みです
微かに疼く傷は、未だ色を失わずに
たとえば、胸のあたりとか
くるぶしのあたりだとか、
柔らかい部分に沢山散らばっている
悲しみの輪郭を、そっとなぞり
この風の行方を探してみる
黒々と揺れる暗がりの奥深くで、
ひゅうひゅうと風は吹いていた
冷たい三月の色をたたえながら
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