七月/草野春心
 
 ぼくの淹れたほうじ茶を飲みながら、
  彼女はそんなことを話してくれた。



  その七月の午後のすべてを
  ぼくは彼女と過ごした。
  話すことがなくなったら彼女は
  また笑った。そんなときには、
  彼女のえくぼのうえで
  七月の光がそっと揺れた。



  夕方は寒くなった。彼女は、
  抱いてほしいとぼくに言った。ただ体を
  抱きしめてはなさないでほしいと。
  ぼくは彼女を抱いた。ぎこちなく、
  座ったまま……



  やがて彼女は言葉もなく
  ベランダからぼくの部屋を出ていった。
  窓のしまる音がすると、
  ぼくは
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