カジ/ジャイコ
 

綺麗に真っ白に
してしまいたい夜がある

君の緑を夢に見たまま
立ち尽くす私の
足元に広がる蝉時雨
白い花弁は雨に消えるの

むかしあたしは
透明になりたかった
どこまでも拡がり
なにいろも吸い込んで
仕舞い込んでしまえる
自由な空のような

いまのあたしは
いったいなにいろに
向かっているのだろうか

強い風に足止めされた
線路の後ろにあるその箱は
君の緑色を内包していて
清潔な蛍光灯に
反射する蛙たちの
鳴き声と共に

私の藍色を浸食していく
月はまだ遠く
星は青の向こう側
あたしはひとりぼっちで
しくしくと積み
重なっていく雨を
受け止めあぐねていて

水滴はやがて
重い青を混ぜた金属の
奥歯に響く味とともに
重力に屈伏し
わたしはかなしい
蛙たちの末路へと
藍の色を捧げるの

いろはひかりで
ひかりの長さが
わたしにささって
いたいのは緑色で
冷蔵庫に隠した
蝉の死骸を夏に
蛙は

とうめいになれたの?

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