目覚めた朝に、生まれたい。/黒木みーあ
 
十五分、唐突に目が覚めると、腕の中に居た母は、窓際の前で朝焼けと燃えていた。夢、だと思った。袖をまくり、洗面台の剃刀で腕を切りまくった。深く入った傷が血管を裂くと、血が噴き出した。母の目の前で、血が噴き出した。それでも母は、朝焼けと燃えていた。わたしは母の胸に倒れ込んで、いっそ眠りたかった。

 あた たかい。
母はそう言って、わたしの胸の中でまた眠りについた。二人とも血まみれで、朝焼けがとても眩しかった。いつまでも、母の寝息は胸の中で温かくて、そのうちに少しずつ、意識が引いていくと、腕の傷がズキズキと痛みはじめた。そこらじゅうから、血生臭い匂いがしていたし、気分も悪くなってきていた。母の頬に触れると、綺麗だった母の頬も血だらけになり、瞳の下では、どうやらクマがまた眠りについたらしかった。



 ((( ねえお母さん、わたしはまだ、死んでいないよ、



浅い眠りにつく前に、わたしの中で死んだように眠る母へ、わたしはそっと、耳打ちをした。
目覚めた朝に、わたしがまた、生まれるように、と。





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