そよ風の便り/寒雪
机の前に座っていると
私の耳に聴こえるのは
静寂の中
静かに通り過ぎるそよ風の行進曲
そろそろ
私にも
旅立ちのための
どす黒い片道切符が配られるのだろう
気がつけば
何回
早春の頃の雪下雫を
初夏の頃の青春を
処暑の頃の早稲田を
真冬の頃の埋み火を
この狭い
コンクリートで塗り固められた部屋で
見送ってきたのだろう
私も長く
ここに居座り過ぎたのだろう
それゆえ
明日の朝には
手続きが始まるかもしれない
けれども君よ
私は彼らに屈服することはない
私はなに一つ後ろ暗いことはない
私はなに一つ疚しくないのだ
彼らの述べる罪
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