あちらがわの記憶/朧月
 
雨は洗い流さない
雨は塗りこめてゆく
だれかの思い出に私の想いを重ねるように
ヒフから冷たい記憶がはいりこむ

なくしてゆくことが生きてゆくこと
それは間違いないことなのに
宣告されることで血の気が引いた

色々な破壊を知ることで
カラダの脆さを思い知る
心だけは残るだなんて嘘はやめてよ

消える
消える
なにも残りはしない
自分の全て

あなたのどこかに私がはいりこんでも
この雨のようにいつか蒸発してしまう
記憶なんて頼りのないシステムなんて
手放せればいいのに

雨は塗りこめる
だれかの思い出を
それは幾重の層になって私のヒフを
冷たく凍らせていった
すぐ次の太陽が
融かすだけの力で


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