ゴルフバック/森の猫
嫌な品物、「ゴルフバック」だ。夫の秀太郎が、いつもゴルフ場から送ってくるのだ、この15年で何回受け取っただろう。ミサキは嫌々印鑑を押す。
奥のクローゼットまで引きずるように、持っていくのも一苦労だ。なんて重いんだろう、何本クラブが入っているかも知らないミサキは、この重さが無性に腹立たしい。自分の寂しかった、悔しかった思いが詰まっているかに思えるのだ。
夫の秀太郎は、入社当時からずっと営業職だ。新入社員研修のとき上司から「ゴルフはたしなんでおくように」と、強く助言されていたと宣言した。その言葉は免罪符ようだ。下手の横好きだが、営業マンはお客様より上手くては都合が悪いのだ。秀太郎の下手さかげんと
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