満腹の日/北村 守通
厚顔無恥な私を
やわらかな笑顔で迎え入れてくれたその家で
酒をごちそうになった
しどろもどろの
要領を得ない
私の話に
やわらかな笑顔で相槌をうってもらいながら
温かい
温かい
食事が
一つ
一つが
食道を通過するたびに
ありがとうございます
胃袋に転がり落ちるたびに
ありがとうございます
食うことが
飲むことが
理由で
言葉にならないものを
噛んでみては
飲み込んで
噛んでみては
また飲み込んで
東京は
やはり故郷であったのだった
東京は
やはり故郷であったのだった
平衡感覚を失い始めた
頭の中に
ただ
それだけが
何度も
何度も
こだましていた
戻る 編 削 Point(6)