嵐/
瀬崎 虎彦
雨が強くなり
森が海に呑まれる
木々の繊維が悲鳴をあげ
窓枠がかすかに共振する
死に向かう命の塊を
やはらかに包んで緑は
夜闇の中で黒と見分けがつかぬ
音がなくなれば沈黙は意味を失くす
剣のようにすすきの原が水底で
雲の切れて月がその姿を顕すのを
ゆらゆら漂うようにして待っている
世界の秘密を独り知る孤独の古木が
橋の袂で身をすくめる動物に
わずかな安らぎを与える隠れ家をつくった
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