おんなの晩餐/朧月
祖母はいつだって母の跡を消そうと
黙ったまま手縫いの布で
家のあちらこちらを拭いてゆく
母は眉間に皺をよせて何も話さない
祖父は しんでしまった祖父は
なぜ遺影になって笑ってるんだろう
私のコーヒーカップが欠けているのに気付いて
そっと置いた
テレビがよくしゃべる夜
みなで集まっての夕食
食卓の真ん中の皿には
手をだせない沈黙
おんなばっかりだから
寡黙なのかな
おんなだから皺が気になるのかな
わたし
母
祖母
三人ならんで座っていると
ほら授業で習った
人間の歴史だよねと
いない祖父に話しかける
祖父の席は
今は私の隣の席
祖父が お前らっていったのは
私たち全員にだったんだよ
そんなこと言えない雰囲気で
静かな夕食はすすむ
戻る 編 削 Point(4)