終わりのブリキ/しろう
び立たなかった人もたくさんいたことだろう
空に星が満ち満ちて
幽かな灯と鏡合わせの天と地で
夜風がきれいだったりするもんだから
吊り橋の真ん中に立った
風も
風の風も
風にならない風も
風でさえない風でさえも
ここは
しあわせの吊り橋
と呼ばれていたので
かつては
たくさんの人がここで満たされたはずだろうし
満たされなかった人もたくさんいたことだろう
たくさんの人が生きて
生きた人がたくさんいた
その終わりの日に
言いたい言葉なんて
なかった
世界に名前がなかったから
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