遠吠えが回るまで/
亜樹
小さなライオンが路地裏で死ぬ頃
サバンナは青かった。
薄暗いゴミ箱で響く遠吠えは
誰も返さないまま
積み重なってコンクリートにヒビを作る。
足首を
引きずって
口を開けるんだ
開いて見える赤
牙は短く
けれど
たしかに尖っている
真直ぐ空を向いて
たしかに白く光っている
小さなライオンが路地裏で死ぬ頃
サバンナは赤かった。
誰も返さない遠吠えが
ぐるりと地球を回るまで
誰も彼が死んだことを知らない。
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