水族館百景/雨を乞う
 
 

繋ぎそびれた手はあてのない旅に出る前にポケットにしまって、
聞いていなかった話の続きを頭の中で作って笑う。
どうしたの?なんて言われる前に糸口を爪で引っ掻いて剥いだ。
患っている。百も承知です。

やはり曇天の葛西には飼い馴らされた魚が無言の影を落とし、
観覧車は音を立てて廻っている。
穏やかに肌寒い夜は結晶化し始めていて、
存続する僕の受話器、
対岸の既視感、
臨んだ海に浮かぶ煌めいたままの工業地帯。

そう言ってやってくるしばらくの沈黙は
僕の脳内や春の海の空気を掻き混ぜるには充分で、
愚かな乞いの魔物がちらつかせるナイフとフォーク、
殺げた鱗に光って消
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