人にやさしくあれ/瀬崎 虎彦
 
かなしみの果て
絶望のふち
そういう言葉は力を持たぬまま
波間を漂う海藻の切れ端

近くなればなるほど恐怖は
足元から冷気のように立ち
悔し紛れに吐いた言葉の中で
今逃れられぬものと対峙するような

人にやさしくあれ
人にやさしくあれ
ただし何も期待をしてはいけない

心を失う前に
失われてしまうほどの弱き心を
投げ捨ててしまうのだ
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