樹木の定義/葉leaf
の会話と厨房の雑音とを妙に硬く感じながら、それらから逃れるように親に電話した。「俺絶対落ちたよ。」
家への帰り道、私の意識は白い膜で覆われ、自分が誰でどこにいるかも分からなくなった。かと思うと私の意識は何かに吸い込まれるように暗まり、呼吸と足音だけが私の存在の証拠になった。絶望は、私が記憶へ融合するのを一切停止し、私を満たす植物をけばけばしいもので置き換え、私に地獄の中の刹那の快楽を舐めさせた。私は夜空を見上げた。私は絶望を夜空に拡散させることで逆に絶望に黒の強度を纏わせ、やむを得ず閉ざされた大地の弱さを吸った。
家に向かう私道の入口に一本の栗の木が植わっていた。私はその木にもたれかかった。私の体は栗の木に完全に結合し、私は自分の体が栗の根によってもはや動けなくなったことを知った。そうやって私は、地下から汲み上げられた自尊心を幹の養分に変え、枝の間を通る風によって過去の栄光が奪われ、わずかに届く月光を葉に受けて心臓に正義をともそうとした。
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