心音と/石川和広
 
お父さん死なんといてな
と私の耳がなっている
別に、早く死なないかなと思った日々がなかった訳でない、夜中セキの音が聞こえると私の闇は凍りつく

何だか、目の前のほとんど病気をしたことのない父がコワレモノみたいに見えて
自分でも謎だ

一秒後父の心臓が止まったら、そんな想像が襲う間、父はチャーハンを炒めている

ぼくも子曰くところの30なんだが、どんどん焦るのだ
僕と父の間をわかつ死の使者の足音が
ぼく

の心音と共に革靴で歩んでくるから?

とても怖い
怖い

存在して
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